山梨大学前の星野書店

山梨大学前の小さな書店の日記です

「林鶴梁日記」と、あるお客さまのこと

先日、某テレビ番組で幕末のことを説明していました。
その中に「林鶴梁」という人の話があり、記憶の欠片がモゾモゾッとしました。

聞いたことがあるなぁ・・。

しばらくして、思い出しました!
「林鶴梁日記」と、あるお客さまのことを。

私がまだ本屋を手伝い始めたばかりの頃のことです。
店のいちばんのお得意様の男性で、本当にさまざまな本を読んでいらっしゃる方がいました。
来店すると毎回、注文する本をメモした紙切れをひょいと出されて。
本を買うのに金に糸目をつけない、そんな方でした。

普通の本から図書館に入れるような専門書まで、その幅広い読書の量と質と読解力に、いつも驚かされました。
そのお客さまの注文の中で、特に印象的だった本のひとつが、この日記でした。

幕末の漢学者、林鶴梁の私的な日記で、日本評論社刊。
1冊約20,000円で全6巻。
けっこう大きな本で、重たい。
予約していた新刊が入荷するたび、お客さまはうれしそうに買いに来てくださいました。

中を見せてくれるのですが、私には読めないし意味もわからない・・。
なんだこれは・・。
本当にちんぷんかぷん。

それをお客さまは「このおっちゃん、面白いんだよ」と、にこやかに笑って教えてくれるのでした。

その時の私は、こんな本をさらっと読めるなんてすごいなー、とただただ感心するばかりでした。
どういう内容だったかはすっかり忘れ・・。

今回、テレビでは林鶴梁という人が幕末の役人で、夏目漱石など多くの人から敬愛された文人でもあったことなどを紹介していました。
あー、そういう人の日記だったのか。
その良さはわかる人にはわかるんだな・・。

そんなに魅力的なら、私も読んでみたいな・・。

そこで調べてみました。
この本、大学や公立の図書館には蔵書しているみたいです。が、私には難しいので、一般向けにやさしく書かれた「ある文人代官の幕末日記」というタイトルの本を注文しました。


お客さま、数年前にお亡くなりになられましたが、注文の本を通して教えていただいたことがたくさんありました。

とても貴重な体験でした。
今でも本当に感謝しています。